フライングがフライングであるために

役者/インプロバイザーであるフライングヒューマノイドナッツの掃き溜め。役者の仕事は言葉にする事と言われたのでとりあえず始めてみたり。

中学一年生

ある時、中学一年生の頃にいつの間にか好きになっていたMちゃん(名前がごっつ珍しかった)との会話の中で「死ぬわけじゃないんだから」的なニュアンスに対して「それ嫌い」と一蹴されて、それ以来あまり積極的に使わなくなった。

なんで嫌いかとかそういう事は一々考えずに、「この人が嫌いなら使わない!」と自分に戒めたモノが暫く残っていた。

しかし、ここ最近「死ぬ事以外かすり傷」という言葉を耳にするようになった。

調べれば2018年に出版された本のタイトルだとか(違ったらごめん)

「死ぬ」という絶対ENDでは無いならとりあえず大丈夫だぁ(志村けん風)

的なニュアンスなのだろう。Mちゃんに嫌いと言われた一言も岡本はそんなニュアンスを含めていた。

 

インプロを始めてからワークショップ内でクラウンを学んだりする事で少なくとも舞台上では死ぬことすら安全に行える事を学んだ。

しかし、現実は違うかすり傷ですら傷だ。傷は目に見えるだけではなく、心に残る。

仕事を始めてから、というより大人になってから傷を作ることが多くなって、ダメになる事が一気に増えた。

死ぬ事だけが絶望では無い。

こんな事を書きながら特に人を傷つける事が多かった人生だからよく考えて生きたい。

 

脚本をちゃんと書いてみたいんだなぁ。

演劇をやる上でやっぱり自分の脳内にある自分が魅力的に感じる。

自分の心地いい語感での台詞を形にしたいと言う思いがあって

何度も何度も書くことにチャレンジした事があります。

 

生ゴミのようにブログに貼り付た脚本のようなものも、知り合いの企画で脚本を募集した時に落選したもので、個人的には気に入っているのだけど、完成させる必要がないから続きが全く描けない。

 

そんな感じで、書き始めては上半身くらいで終わり、下半身のないてけてけのような作品、と呼んでいいかわからない文字の羅列は意外とあって、卒業直前の3月なんて面白くもない文章を誰もいないサークル室で毎日夜10時まで書いていた。

脚本を書くための本を読んだらしてみるのだけど全然身にならなくて

でも最近その理由がわかった気がした。

 

完全に教養不足の一言に尽きる事がわかった。

 

一般教養は勿論なのだけど、本を殆ど読んでこなかった人種で、脚本は読むけど、声に出さないと入ってこないし、兎にも角にも人の文章に全然触れてこなかったわけです。

もっと言うと、SNSなどで文字には触れているが、物書きの質の高い文章にはあまり多く触れていなかった。これが、多いな要因である。

 

私は文章を書く時、構成など微塵にも考えず、下書きもなく、書きたいことも漠然としている中で修正もろくにせず、書きながら思ったことを全部書いちゃっているわけで、お陰様で遠回りした文章、ゴールが違うところにたどり着く文章になるのです。

 

卒論の指導の中で、教授に

「あなたのレポートはブログね。」

と言われた事が未だに忘れられない。

 

我流で行こうだなんて思っちゃいないけど、せっかく文字をすぐに文字にできる時代である。

どうにかこうにか脚本を書き続けることを諦めずにいたい。

 

ノンバーバルコミュニケーションにハマってます

昨年末に忍翔さんのワークで取り扱った

「ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)」

が自分の中で大ヒットを起こしています。

障がい福祉分野で働いているからというのもあるのでしょう。

言葉に頼らないコミュニケーションの成り立ちに感動を覚えます。

また、わたくち「柿喰う客」という劇団がとっても大好きなのですが(語彙力)

彼らの目まぐるしく過ぎて行くセリフたちを裏付け、観客が巻き込まれるのは彼らのこれでもかという程の身体言語が根拠なのかなと思います。

自分なりにも勉強してみますが限りがあります。

どこかいいワークあったら教えちくり

タイトルなし。

続きを書くかもしれないし書かないかもしれない脚本になる予定だったもの

 

登場人物
・雨宮 大学生 女性
・六月 フリーター 男性
・雪村 雨宮の彼氏
・日向 雨宮のバイト先のバイトちゃん。女性。
・影山 雨宮のバイト先の店長
・五朗 六月の友人。大したことない男。

 

とある雨の日。一人の女が雨宿りしている。雨宮という女性である。何度か誰かに電話を掛けているが出ない様子である。その前を傘を差した六月が通りかかる。
お互いに存在に気づく。
雨宮軽く会釈をする。
六月去る。が、ちょっとして戻ってくる。

 

六「あの」
雨「はい」
六「お隣、ですよね」
雨「え、あ、多分」
六「サンハイツ山之辺ですよね」
雨「そうですね」
六「よかったら入りますか?僕も帰るところなんで」
雨「いいんですか」
六「どうぞ」
雨「じゃあお言葉に甘えて」

 

雨宮、六月の傘に入る。それからゆっくりゆっくり舞台の上を歩く二人。

 

六「今思えば自分がなんであんなに大胆な行動をしたのかわからない。せっかくの雨だからと新しい傘を買って強気になっていたのかもしれない。あの場所からマンションまでは思ったより遠かった。とりあえず、お隣なのに挨拶に行って無い事を詫びたのは覚えている。それ以外は何を話したのかはよく覚えていない。後は、傘の中の彼女はいい匂いがした。いい匂いがしたからちょっぴりくんくん嗅いでみた。やっぱりいい匂いがしたが、そんな自分にちょっぴり罪悪感を抱いた。」

 

お互いの部屋の前に着く二人。

 

雨「ありがとうございました。」
六「いえ」
雨「また今度お礼でも」
六「あ、いえ、ただ傘に入ってもらっただけだから」
雨「じゃあまた何かの機会に」
六「はい、それじゃあ」
雨「明日は」
六「はい?」
雨「明日は晴れるみたいですよ」
六「それはよかった。それじゃあ」

 

雨宮ドアに入る静止。

 

六「明日なんて待たずとも僕の心は満天のサンシャインだった。」

 

六月ドアに入りはける。雨宮動き出す。荷物を置き何かに気付く。そこでお風呂上がりであろう雪村が出てくる。

 

雪「おー、おかえり」
雨「ねぇ、なんで電話出てくれなかったの?」
雪「雨に降られてさー。傘なかったからすげぇ濡れたんだよね。?めっちゃ電話かけてんじゃん。どしたの?」
雨「だから、急に降ってきたから電話かけたの。迎えに来てもらおうと思って。」
雪「あーごめんごめん。でもお前全然濡れてないじゃん。」
雨「これは、カバン探したら折り畳み入ってたの」
雪「なんだよ、じゃあそんなおこんなよ」
雨「そうだね。ごめんね。」

雪村携帯をいじり始める。雨宮横に座る。

雨「ねぇ、本当に来ないの?」
雪「無理だよ。流石に一週間は休めないよ。」
雨「そうだよね。お土産何がいい?」
雪「えー、なんでもいいよ」
雨「うーん。わかった。ご飯作る。何がいい?」
雪「ナポリタン。」
雨「あいよ。」
雨宮はけようとする。雪村ついてくる。
雨「何?手伝ってくれるの?」
雪「トイレ。」


雨宮、雪村はける。一人の女性が入ってくる。名札に名前が書いてある。名前は日向。何かの作業をしているようである。一頻り作業を終えたあたりで男性が入ってくる。名前影山。

 

影「日向ちゃんこれもお願い。」
日「了解です。」
影「悪いね。仕事任せちゃって。」
日「大丈夫です。お客さんもまだ来ませんし。」
影「ひ、な、た、ちゃん。お客"さま"」
日「すみません影山さん。」
影「ノンノンノンノン。ノンノンノンノン。ま、す、た、ー。」
日「すみません影山さん。」
影「君わざとでしょ。」
日「わざとじゃ無いです。」
影「怒ってる?」
日「怒って無いです。」
影「あそ。じゃあそれ宜しくね。ちょっと外出てくる。」
日「は?お客さん来たらどうすんですか?」
影「何とかなるでしょ。それにもうすぐ雨宮も出勤してくるし。」
日「お客さん来て料理頼まれたらどうするんですか?」
影「大丈夫!ちょっとだから!ドリンクで繋いどいて。」

 

影山はける。袖で雨宮とすれ違う。「よろしくね」だの何だのが聞こえてきて雨宮が入ってくる。

 

雨「お疲れ様です。」
日「お疲れ様です。」
雨「影山さんどこいったんですか?」
日「わからないですよ〜!料理頼まれてもドリンクで繋いどいて、らしいです。」
雨「ドリンクで繋ぐ...?」
日「しかも聞いてくださいよ。お客さんいないラッキー!ボーッとしてられるわ。とか思ってたら発注頼んできやがりましたよあいつ!発注なんてバイトの仕事じゃ無いです。」
雨「マジか〜。影山さんがやってるトコしか見たこと無いから自信無いけど着替えたら手伝うね。とりあえず、影山さん帰って来るまでお客さん来ないこと祈ろ。」
日「そうですね。」

 

雨宮着替えにはける。日向発注作業を何となく再開。が、携帯をいじり始める。そこへ、おどおどしながら六が入ってくる。が、しばらく日向は気が付かない。

 

六「すみません」

 

日向は気が付かない。六月がはけようとする。日向気がつく。

 

日「あ、いらっしゃいませ!」
六「え、あ、もう営業してますよね。」
日「すみませんちょっと気が付かなくて。」
六「こっちこそすみません。こういうお店来るの初めてで。」
日「いや、どんなお店だと思ってるんですか?」
六「居酒屋ですか?」
日「居酒屋ですね。」
六「あー、すみません。あれです。一人でくるのが初めてでって意味です。」
日「そうなんですね。じゃあとりあえずあちらのお席どうぞ。」
六「どうも。」

 

日向、おしぼりなどを渡す。

 

日「ご注文は、まだお決まりで無いですよね。」
六「はぁ」
日「お決まりになったら呼んでください。」

 

六月メニューを軽く見て決める。日向の方を見るが日向は無視をする。今度は少し手を挙げる。が、日向は見ていないふりをする。

 

六「すみません。」
日「ご注文お伺いします。」
六「あ、はい。あの、ビールください。」
日「シール?」
六「ビール」
日「カール?」
六「逆に置いてるんですか?」
日「いや、流石に。」
六「ビールください。」
日「ほんとうに?」
六「ほんとうに。」
日「当店のビールはお客様に最高の品質をお届けするために特殊な製法を用いている為少しお時間頂きますが大丈夫ですか?」
六「はぁ。じゃあ、ついでに」
日「以上ですね!かしこまりました!」

 

日向、独特なポージングでグラスに気を溜め始めるふりをする。

 

六「何やってるんですか?」
日「特殊な製法ですので。」
六「へぇ、楽しみだなぁ。あ、じゃあお手洗いどこですか?」
日「あちらでございます!大でも小でも大でも大でも!どうぞごゆっくり!」
六「そ、それじゃあお借りします。」

 

六月はける。

 

日「ドリンクで繋ぐの何かいけそうなきがする。」

 

妙な自信を持った日向。そこへ、雨宮が着替えてやってくる。

 

雨「あ、日向ちゃんさ、来週の件聞いてる?」
日「ああ、影山さんから聞きました。」
雨「ごめんね〜、来週シフトきつきつでしょ。」
日「大丈夫です。それよりお土産期待してますから。」
雨「うん。何か可愛いやつ買ってくるね。あれ、お客さん来ちゃったんだ。」
日「そうなんですよ。だから言われた通り何とかドリンクで繋いでるんです。」
雨「ドリンクで繋ぐ..?」

 

そこへ、六月が戻ってくる。

 

六「あ。」
雨「あ。お隣の。」
六「どうも。」
雨「この間はありがとうございました。」
六「いえ、そんな大した事じゃ。それより、ここで働いてたんですね。」
雨「ええ、まあ。週2くらいで。」
日「えっと、お二人知り合いなんですか?」
雨「お隣さんなんだよね。」
六「そんな知り合いってほどでも無いですけど。」
雨「そんな事無いですよ。充分知り合いです。」
六「そっか。」
日「へー、偶然ですね。」
雨「そうだね。あ、何か飲まれます?この前のお礼で一杯奢りますよ。」
六「え、じゃあお言葉に甘えようかな。さっきビール頼んだんですよ。」
雨「ビールですね。少々お待ちください。」

雨宮、手際よくビールを注ぐ。
六「あの、特殊な製法は...?」
雨「特別な製法?」
日「雨宮さんはプロなんで。」
六「プロなのか。すごいなぁ。」

そこへ、影山が戻ってくる。

影「悪い悪い遅くなった。あ、六月!」
六「先輩!お久しぶりです!」
日「あれれ、こっちもお知り合い?」
影「こいつはなぁ、俺の大学の時の後輩なんだよ。」
六「そうなんです。」
影「ここら辺住んでたならもっと早く言えよ。」
六「すみません。先輩が店出してるとも思ってなかったんで。」
雨「じゃあ今日は影山さんに呼ばれて来たんですか?」
六「そんな感じです。」
影「今日は珍しく空いてるからさ、ゆっくりしていってよ。」
六「ありがとうございます。」
六「僕はあんまり強い方じゃなかったけど、この日は調子に乗って沢山飲んだ。先輩がおごってくれるって言うもんだから、嬉しくなって飲んだ。そして何よりも偶然、雨宮さんに会えた事が僕を調子にのらせた。偶然という言葉が、普段人見知りな僕をもの凄く調子にのらせた。偶然とはどうしてこんなに運命的なのだろう。通おう。通おう。この店に通おう。そう心で呟きながら僕はアルコールの海を泳いで、溺れた。」

 

六月酔っている。ふらふらである。雨宮がマンションまで送ってくれている。何かを話している様子である。声は聞こえない。何やら雨宮が怒った様子で部屋に戻る。六月は部屋に入りそのまま崩れ落ちる。雨宮の部屋。雪村が寝ている。

 

雨「ちょっとどいてよ。」

 

雪村起きない。雨宮タイマーを耳元でセットして荷物を置きにはける。タイマーが鳴り雪村がびっくりして起きて止める。二度寝。雨宮が戻ってくる。

 

雨「ちょっと起きてよ。」
雪「なんだよ。」
雨「それ私の布団。」
雪「そう。」
雨「バイト帰り。」
雪「じゃあ俺仕事帰り。」
雨「自分の家で寝なよ。」
雪「ごめんごめん。」
雨「ごめんっていうくらいならどいてよ。」
雪「わかったよ。」

 

雪村少しはじにズレる。

 

雨「そういうのじゃないってば。」
雪「何イライラしてんだよ。」
雨「別に、なんでもない。」
雪「バイトくらいで弱音吐いたら社会出たらもっとしんどいぞ。」
雨「別にバイトだなんて一言も。」
雪「顔に出てるよ。顔に。俺なんて今日早番で朝から。」
雨「もうわかったから。」
雪「ったく、そんなに怒んなよ。」
雨「だから怒ってるわけじゃ。」
雪「あ、そういえば飯なかったから冷蔵庫にあったの適当に食べだから。」
雨「え?」

 

雨宮冷蔵庫を確認しにはける。駆け足で戻ってくる。

 

雨「なんで全部食べちゃうの?」
雪「だってお前まかない食べてきただろ?」
雨「賄いなんてうちの店ないよ。」
雪「え?ないの?普通飲食ならあるだろ。ありえないなその店。」
雨「ゴーホーム!」
雪「は?」
雨「ゴーホーム!!」
雪「もう終電ないし。」
雨「もう、ほんと最悪。」
雪「なんか言った?」
雨「なんでもないよ。」

 

雨宮の部屋の照明が落ち、六月の部屋に徐々に光が灯る。

 

六「言いようのない気持ちの悪さが全身を駆け巡っていた。その気持ち悪さが人の形をして僕に近づいてくる。どこかへ連れて行こうとする。これが夢だということに気がつくまで然程時間はかからなかった。いや、もしかしたら現実では相当な時間が経っていたのかもしれない。」

 

スローで黒い人物が二人六月の周りを這う。その横で早送りのように雨宮がキャリーバックを提げて何処かへ消えていく。

 

六「夢の中なら僕は無敵だった。明晰夢というやつらしい。僕はここでなら空だって飛べるし、ウルトラマンに変身だってできる。彼女だってできる。」

 

一人の黒い人に近づき雨宮に行ったように抱きつこうとするが同じように拒否される。

 

六「こう、上手くいかない時は現実の追憶だと思う。が、僕にはこんな事した覚えがない。やっぱりこれは明晰夢なのだろう。」

 

黒い人の一人がキャリーバックを持ち去っていく。黒い人の一人がドアの前にいる。遠くからチャイムが聞こえる。

 

六「寝ている僕が見える。夢の中くらいもっとイケメンにしてほしいんだが、自己肯定感が低いのだろう。」

 

チャイムが大きくなる。黒い男がドアを開けて入ってくる。鍵が開いているようだ。

 

黒「六月。」

 

黒い男がマイムで誰かを揺らしている。

 

六「夢の中で声を掛けられるなんて新鮮な気分だ。雨宮さんだったら嬉しいのだが、体格からすると男のようだ。」
黒「六月」
六「感覚が鈍ってくる。正確には感覚が目を覚ます方にシフトしていくんだろうけど、その一瞬胎児が生まれる直前のような暗黒に引きずり込まれる感覚が襲い、夢の中の出来事の大半を道連れにする。
ああ、起きるのだな。何となく思う。思ったのかもしくは後から思ったと思ったのか。」
黒「六月!」

 

六月黒い男がマイムで揺らしていた人物の元へ倒れる。六月目を覚ます。

 

五「六月!よかった!生きてた!」
六「え?お前なんでいんの?」
五「鍵空いてたから。チャイムならしても全然出なかったし。」
六「あれ、昨日開けっ放しだったかな。ごめん、それより超絶喉乾いた。水入れてきてくれない?」
五「あぁ、わかった。」

五朗水を入れてくる。

六「ごめんありがとう。ってか何で来たの?」
五「なんでって、お前昨日連絡したのに一向に既読もつかない電話も出ないだから心配してきたんだよ。」
六「昨日?」

 

六月携帯を見る。

 

六「うわ、めっちゃ通知きてる。?。??。え、俺昨日丸一日寝てたの?!」
五「え、寝てたの?」
六「俺一昨日影山先輩の店行って飲んできたんだよ。んで、俺として頑張りすぎちゃって、帰りから今まで記憶ないんだよね。」
五「あー、俺いけなかったやつか。うわ、じゃあ本当に丸一日寝てたんだね。」
六「どうりでこんなに干からびてるわけか。」
五「餓死してるんじゃないかと思ったけど、本当に干からびる寸前だったとは。」
六「いや、マジでありがとう。」
五「それより、どうだったの影山先輩の店。」
六「なんか、普通の居酒屋って感じだったかな、料理は普通に美味しかったよ。あ、でもそれよりもさ雨宮さんが働いてたんだよ。」
五「雨宮さんってあのお隣で相合傘していい匂いがしたっていう。」
六「そうそう!しかもわずわかな記憶を辿ったら酔っ払った俺を送ってくれた気がするんだね。」
五「やっべぇ。抱けるじゃん。」
六「抱けるかな?ってかもしかして覚えてないだけでなんかあったかな?」
五「流石に餓死しそうな六月見る限りないんじゃない?」
六「うわー、なんで頑張らなかったんだよ〜俺バカじゃん。」
五「ラインとか聞いたの?」
六「え、覚えてない。見てみる。」

 

六月携帯を見る。

 

六「追加されてないっぽい。俺バカかよほんとによー。」
五「でも、その関係ならワンチャンあるよ。」
六「あるかなぁ。」
五「ってかその前に彼氏いるの?その人。」
六「あ、知らない。」
五「リサーチリサーチ!ちょっとさ向こうの音聞いてみない?」
六「あるなぁ!」

 

六月、五朗壁に耳をつけて音を聞く。
雪村登場。雨宮の部屋で勝手に過ごしている。

 

五「人の気配はするが、会話は聞こえない。只今月曜日の午後9時21分。彼氏がいるような女であれば今頃楽しいラブロマンスな会話できゃっきゃうふふカーネーションの花を咲かせているはずだ。ちなみに、我々は彼岸花だ。つまり雨宮さんは今、独り身である!!」
六「ほんと?」
五「確証はないが自信はある!」

雪村料理を始める。

五「!?これは包丁で華麗に何かをトントン、トントトンと刻む音!料理を始めたぞ!」
六「よく聞こえるね。」
五「これは女子力の塊じゃないか。一人暮らしで自炊をする乙女なんて最高じゃないか!お嫁にしたいオブザイヤー2018を軽く受賞するぞ。」
六「そんな賞があるのか!すごいなぁ。」
五「!?これは、この音はカレーだ!このグツグツと煮え滾るマグマのような沸騰音、これは間違いなくカレーを作っている。カレーを一人暮らしの女子が食べますか!?」
六「食べると思うな!」
五「これはきっと作りすぎちゃったとか言いながらこの家のチャイムを鳴らすぞ!確実だ。」

肉じゃがの味見をする雪村。

五「これは、拙者がいていいものか、いやいてはならない、いちゃダメなのよ、ダメダメ。と言うわけだ。今夜はお楽しみですね。ドロン。」

 

五朗が軽快に走り去る。

 

六「おい、五朗!」

 

五朗が戻ってきてチャイムを鳴らす。六月びっくりして恐る恐る開ける。

 

五「ごめん、携帯忘れた。はっはっはっ、ドロン。」

 

再び五朗が去る。

 

六「この日は結局五朗が鳴らしたチャイムが僕の部屋の最後のチャイムとなった。期待なんてしてなかったけど、ちょっと想像したらワクワクしてしまった。間に受けやすい僕は五朗の言っていたことに変なリアリティを感じていた。しかし、妙な引っ掛かりが取れないのも事実であった。」

平衡感覚

いつも何かに飢えている

飢えているから

良いことでも

悪いことでも

手当たり次第に

手を出す訳で

良いことと

悪いことの

分別くらい

付いてる訳で

布団の中で想いを馳せるか

後で悔やむ事が殆どで

どっちでもいいんだけど

どっちかがいいんだよな

マイナスはプラスへ向かうエネルギーが

プラスはマイナスに引っ張られるエネルギーが

均衡はゼロ

ゼロへのアプローチは事件

事件を欲する自分は案外

平和な弥次郎兵衛なのかも知れない